機動戦士Zガンダム第8話「月の裏側」
●ナレーション
「それは、かって魂を持ったものかもしれない。
しかし今は、それが、神の国にたどり着くことはないだろう。
そこには、人と名乗る知的生命体が住む惑星があった。
人々は、ここで子を産み、育てることを、当たり前の事としすぎていた。」
土星の環から宇宙を漂流するジオン兵、コロニー内側から見た地球と月と、宇宙的な視点(?)で流れる映像に合わせたナレーション。最後の一文は初代ガンダムのナレーションを思わせます。
物語展開とは大して関係ないですが。このモチーフは劇場版のオープニングにてリメイクされます。
●ティターンズ艦隊
月の表面に浮かぶようなアレキサンドリアと2隻のサラミス改。
月の巨大さと、それに対する宇宙戦艦のちっぽけさが素敵な対比です。
ここでアレキサンドリアの中にガルバルディが。ボスニアの残存機でしょうか。ジェリドはガルバルディに乗って出撃する気満々です。
●アーガマ
前話ラストとは打って変わっていきなりキレているカミーユ。
エマはこの日から保護観察が解けて正式なエゥーゴの一員に。
かまってほしくない不安定なカミーユと、カミーユをニュータイプとして接してくるエマ。ここでもいまいちコミュニケーションがうまくいきません(こればっかり)。
アムロ・レイの記憶を話すエマ。カミーユにこの話がしたかったんだな、といった感じです。2年前の時点でアムロが「シャイアンの大豪邸」に住んでいたらしい事、そして宇宙に出られずに悶々としているのではないか、と語られます。
エマが「ガソリン車」と強調している車は、よく見ると20世紀初期のクラシックカーのようです。ガソリンで動く車自体がこの時代ではひどく珍しいのでしょう。
「じゃあシャアには会ってるんだ」とカミーユ。ていうかよくよく考えればクワトロ=シャアって察しはつくと思うんですが、ひどく驚くエマ。そしてそれをこっそり聞いているクワトロ。
●敵襲
ジェリドの役目は「ガルバルディのフル装備のバランスを確認する」、これに加えて「アーガマの追跡と潜伏場所の確認」です。前話の流れからいってジェリドがそれでおさまるはずもありません。はなっからライラを落としたガンダムMkⅡに弔い合戦を仕掛けます。おかげでアレキサンドリアはアーガマを見失うのですが。
クワトロは紺のリックディアスに搭乗。
月面でのMS戦がちゃんと描かれるのって、ガンダムシリーズを通しても意外と少ないんじゃないか、Zは多いほうなんじゃないかと思います。
破壊されるビームライフル。細かい書き込み。
「ニュータイプだってスーパーマンじゃないんだ!」
ジェリドの名言。
不慣れな月面とジェリドの気迫で、カミーユのMkⅡは右足を壊されライフルを失いピンチ。しかしクワトロに助けられます。
アーガマに帰ったMkⅡは右足を全交換へ。さっそく解体されたスペアのお出ましです。
●月面都市
クワトロの自室?が出てきます。部屋に入ってすぐ、帰還を待っていたかのようにキグナンが入ってきます。クワトロに咎められても「私にとってはシャア・アズナブル大佐です」と呼んではばからないキグナンは元ジオン軍人でしょう。そしてエゥーゴの一員でしょうが、シャアの個人的な部下といった印象です。
この場面ではその他にも、以下のような事柄が出てきます。地味ながら濃い場面です。
・部屋に入って荷物を置くなり机のセイラとの写真を眺めるクワトロ。
・クワトロの「うまく行くのか?」というのは、のちのサチワヌ奪取の事か。
・会話にアナハイム、アクシズ、ハマーンの名前が初登場。
・「アクシズ」は「ジオンの亡霊」で「だいぶ前からアステロイド・ベルトより地球圏へ向かって動いている」。
・ハマーン(この時点ではハマー・カーンと呼称)は20歳になった。
・グリプスが動き出した(物理的な意味で?)
どう見ても「2087年9月20日」と読める写真。
ウォン・リー(やはり初登場)からの伝言はハンバーガーショップ「マクダニエル」への招待。クワトロはマクダニエルを知りません。伝言メッセージの使用料は15セントでカード払い。
補給物資の少なさに怒るジャマイカン。グラナダはエゥーゴの影響が強いから、と考えています。実際そうでしょう。
先の戦闘で軍紀違反のジェリドは謹慎処分でやさぐれ気味。カクリコンはエゥーゴに関しての情報をつかみ(どうやって?)、ジャマイカンの許可もとって作戦を仕掛けるつもり。
●カミーユとエマ
なぜか街の外をドライブしている2人。
月面には一年戦争で破壊されたコロニーの残骸が。戦争の爪痕はこんなところにも。戦後もしばらく、こうした宇宙ゴミが漂着して月面都市はかなり困っていたのではないでしょうか。
「でも驚きね。ジャブローの近くにエゥーゴを支援する街があるなんて」
「本当。港の奥のドックにも新造戦艦があるんですものね」
ここでの会話はどうもミスな気がします。
新造戦艦はアイリッシュ級の事でしょう。
●マクダニエル
マクダニエルに向かうクワトロのシーンは、彼がアーガマからアンマンへ降り立つシーンから一部流用されてます。後ろの人物が後をつけてきたように見えてしまいます。
マクダニエル外観。マクドナルドに似てませんが、キャラクターはやはりピエロ。このスペル「Macdaniel」だと発音は「マックダニエル」でしょうか。
今回しか出てこない、貴重なマクダニエル店員スタイルのヘンケン。というか表向きマクダニエルで働いていることになってるんでしょう。
ここでウォン・リー初出演。エゥーゴのスポンサー。
この「スポンサーが現場の意思にかかわらず作戦を決定する」「クワトロは反対するがやらざるをえない」というのは、そのままバンダイと冨野監督のメタファーでしょう。わざわざ物語に取り入れているのは監督なりの嫌がらせかもしれません。ウォンの計画や見通しはいかにも机上のプランといったふうに描かれます。
ジャブロー侵攻を主張するウォン・リー。もちろん彼だけの判断ではないでしょう。クワトロは「戦力差」「地球上の破壊行動は地球を汚染」「脱出の問題」を反対の理由に挙げ、グリプス撃滅を主張します。
ウォンは「グリプスは所詮連邦の手足であり、拠点のジャブローを叩かないと次のグリプスが生まれる」「ジャブローを叩けばグリプスだって補給がなくなる」「世界がエゥーゴを認めて民を一挙に味方につけられる」と反論。
「ウォンさんは出資者だと思っていたが、政治家になるおつもりで?」これはクワトロなりの皮肉でしょうが、ウォンに軽く流されます。
さらに会話に「エゥーゴの地球での支援部隊カラバ」が登場。
MSはカラバに渡してパイロットは宇宙へ帰ればいい、というウォンに「出資者は無理難題をおっしゃる」と言って席を立つクワトロ。
しかし彼はその無理難題をやってみせるしかないのです。
●カクリコンの襲撃
どこで情報を仕入れたのか、ハイザックまで用意してアンマンに来ているカクリコンと仲間達。カクリコンはドライブ中のエマとカミーユを生身で襲撃します。
エマに話しかけているあたり、この時点ではまだエマを本気で殺そうとしているように見えません。捕えようという意思があったのか、あるいは理解できない寝返りの理由を確かめたかったのか。一応はかつての同僚ですからね。
ここでカミーユは、コロニーの残骸から壊れたハロを回収します。ところでこのハロ、何気にカクリコンの銃弾を弾いています。どんだけ頑丈なんだ。
見終わってみて、後々出てくるキーワード・伏線が多数出てくることに驚きます。正直詰め込みすぎな感じです。前半のジェリドの襲撃と終盤のカクリコンの襲撃はとってつけた感じで、今話のキモはとにかく「クワトロとキグナンの会話」「マクダニエルでの会談(ウォンリー初登場)」にあるのです。
「月の裏側」というタイトルは、物理的な意味(地球から見ることのできない裏側)と、月面都市やそこに生きる人々の内情といった意味のダブルミーニングでしょう。クワトロの住まい?があり、ティターンズにろくに補給せず、エゥーゴのスポンサーが集まる月。きれいな月面都市の、しかしすぐ外にはコロニーの残骸が広がっている月。こうした奥深さが、Zガンダムをただの失敗作とはいえない魅力ある作品にしていると思うのです。
機動戦士Zガンダム第9話「新しい絆」
新しい絆というのは、カミーユとエマやエゥーゴの面々、カミーユとハロ、レコアとカイといった関係が当てはまるのでしょう。カイ再登場とウォンの修正、ハロ復活、百式・マラサイ・ネモ・アイリッシュ級の新登場、リックディアスの色変更、白兵戦、カクリコンの奇襲と、相変わらず内容が濃いです。
●ジャブロー周辺
6話以来のレコア登場。川を下りながら状況を分析しています。
ここでガルダ級が初登場。緑色なのでスードリでしょう。地上にうつるその影はまるで巨大な怪鳥といったところ。ジャブローからどこかへ向かう風ですが、レコアいわく「これで45機め」であり、そしてガルダ級は初めてのようです。
レコアはあっけなく連邦軍人に捕まりますが、ここで南米のジャングルに上下白いスーツ(!)のカイ・シデン登場。第1作のキャラクターとしては、シャア・ブライト・アムロ・セイラ(写真だけ)に続いての登場です。ずいぶんといい男になりました。連邦軍人はあっけなく逃げ出します。
「フリーのジャーナリストってさあ、いつバチカンに取材に行くかわからないだろう?」
意味はともかく相変わらずいいセリフ。
しかし彼はこのスーツで、いつどうやってこの場所に来たのだろうか。
初めからエゥーゴのエージェント(レコア)と合流してジャブローに潜入する予定だったのか?
●カクリコン
潜伏中のカクリコンと同僚キッチマン。
キッチマン、ハンバーガーの具がチキンであることに愚痴をいい、大口を開けてかぶりつき、カクリコンの「怖いのか」の問いに「当たり前でしょう」と答えます。冨野アニメはとにかく端役が生き生きとしている。
グラナダに連絡に向かった兵、マサダ軍曹の名が出てきます。この後もわざわざ名前が出てくるのでそこそこ重要かと思えば、単に端役です。
●グラナダ
アレキサンドリアが停泊するそのすぐ隣に緑色の謎の新造艦!
アイリッシュ級初登場です。名前は出てきません。
ジャマイカンやアレキサンドリアのクルーはこれを見てどう思ったことか。
グラナダぐるみでエゥーゴに手を貸しているのでは、とジャマイカンに聞かれて反論する女性士官はマニティ・マンデナ。こちらも本編で名前は出てきません。
ジャマイカンに「アナハイムからの補給(MS含む)」を伝える兵は、カットによって正規カラーになってます。色ミスです。
マサダ軍曹が到着します。
補給が決まったところで、ジャマイカンはサチワヌをグラナダに残して2隻で発進しようとします。1隻残すのはグラナダへの疑念からきているのでしょうか。女性士官が「サチワヌは?」と聞き返すのが、後の展開を考えると意味深です。
●ハロ
ハロの修理に没頭するカミーユ。
生活描写がいい。
アムロの名前を口にするハロ。10年前(カミーユ談)のチップが使われているハロ。ハロへの関心を募らせるカミーユ。集合の号令に反応せず、注意されても「軍属ではない」と言い、エマにぶたれます。アムロ・レイと違うのは、カミーユはぶたれても反応が薄いんですね。どこかうわの空というか。「親父にもぶたれた事ないのに!」と逆ギレするような感じが基本的にありません。
「今日の48機め」の輸送機。ここで初めて「ジャブローの引っ越し」が語られます。
連邦軍はジャブローの機能を移転しようとしている。おそらくエゥーゴが襲撃をかけてくることも想定しているだろう。となればジャブローに襲撃する意味がないが、それをエゥーゴに連絡する手段がない。ということでカイはジャブローへの潜入を提案。
いやいや捕まるだろう。
ところでこれだけ輸送機が出入りしているのを知れば、誰だってジャブローが通常ではない事を想像するでしょうが、エゥーゴやエゥーゴを支援する人々がそれを知る手段は全くなかったのでしょうか?
●アンマン
2隻のアイリッシュ級。色が微妙に違うのがポイント。左はラーディッシュや冒頭のグラナダにいた艦と同じ色。右の艦はエゥーゴのサラミス改と同じ色。少なくともこの2隻は連邦政府の目を盗んで献金で建造されたものと語られます。
連邦政府とスペースノイドの関係をウォンはかつてのヨーロッパとアメリカに例えています。歴史は繰り返す、と。
ここでZガンダム名物「修正」が初登場。この場面が強烈なので、ウォン=修正というイメージがある人って多いと思うんですよ。
パイロットの少年がエマに怒られながら手を引かれて、しかもミーティングに小脇にハロを抱えて遅刻して来るというのは、誰がどう見ても意識が欠けているので、武装組織の大人としてみれば修正せずにはいられないでしょう。
「つべこべつべこべと、なぜごめんなさいと言えんのだ!」
言い訳を話すばかりのカミーユに更にキレるウォン。ただ、生意気な少年がしょっぱなから殴り蹴りまくる男にすぐ「ごめんなさい」と言うかというとそんな事はないわけで。ここでもコミュニケーションが負の連鎖してますね。
カミーユが「暴力はいけない」というのは実に滑稽です。
目覚めたカミーユ。
クワトロ以下グラナダへ出撃の準備です。アポリーとロベルトが久々登場。
クワトロいわくあのハロは市販されたもの。えっハロって市販されてたの?という疑問を受け付けないかのように会話が進みます。
この場面でのカミーユのセリフはまさに子供のだだといった感じで、作中でもっともカッコ悪いカミーユが描かれます。エマのビンタ(今話2発目)が飛びます。自分の都合で大人と子供を使い分けるな、という言葉はさすがにカミーユに響いたでしょう。これ以降ここまで面倒なカミーユは出てきません。
●グラナダ出撃
出撃の目的は「百式のテストとグラナダの支援」。
百式が初登場。
リックディアスは「目立つ色」に。変更理由はアポリー曰く「味方に撃たれないため」、それが赤なのはロベルト曰く「大尉の色は人気がある」から。
これまでのカラーリングはティターンズ的で、しかも宇宙空間で視認しにくそうなものでした。それがより派手な色に変更されるのは、これからはそのうした一種の隠密性の必要がなくなったことを意味します。
ジャブロー攻撃も控えてますし、エゥーゴはいよいよティターンズに正面切って戦いを仕掛けるという事です。
出撃するクワトロ達はカクリコンの部隊に把握されてます。
カクリコンはあくまでアーガマを沈める機を伺っているのです。
「母艦を沈めれば、MSなんて人形みたいなもんだ」
ここで場面がアレキサンドリアに切り替わるのですが、出てくるのはガディ艦長です。同じ中の人が演じているキャラが続きますが、それほど違和感がないのがさすがです。
どこかジェリドを擁護するかのようなガディ。しかし「ハイザックの調子が良くない」という理由で彼は今回出てきません。
クワトロ達の後を追ってカミーユの出撃。
エマの檄が効いたのか、打って変わってやる気満々のカミーユ。
●アナハイム・エレクトロニクスの補給
マラサイ初登場。少なくとも5機。補給している場所はアナハイムでしょうか。
グラナダで正規軍が補給を減らした埋め合わせ、というのもあるのでしょうが、基本的には関係なく、エゥーゴの活動本格化を前に「アメ」も配っておこうというところでしょう。なんせ最新鋭のMSを数機、無償で贈ってますからね。
「バスク大佐はここを無傷で手に入れるつもりだ」
「なるほど攻撃をしないで恩を売っておく」
「クギはさしておくか」
「我々はこの工場の強制捜査はしない。銃一発撃たないという事だ。その点をメラニー・ヒュー・カーバイン会長にお伝え願いたい」
「もちろん今日の分はバスク大佐へのご挨拶という事で、タダでよいと会長から申しつけられております」
「ティターンズの世になると読んでいるわけか?」
「さあ、そこまでは」
言葉の駆け引き。
●戦闘
いよいよ動くカクリコン隊。2機のハイザックの腰には追加のミサイルポッドが。
MS隊が入港したのを合図に作戦開始を告げるグラナダの士官(向かって左)。知らなかったのか、作戦に不安なのか、右の士官がうろたえているのが細かい。
カミーユはここで作戦を知らされます。すなわちティターンズ艦(サチワヌ)の奪取。
百式の目が初めて光ります。
ドックには2隻のサラミス改が。色がどっちもティターンズ色ですが。一方はグラナダの艦という事でしょうか。
青ハイザック初登場。てことはティターンズじゃないの?とも思いますが、劇場版Ⅱでもドゴスギアのハイザックが青かったり、いまいちこの青ハイザックって扱いがあいまいな気がします。
でも襲われるサラミス改のクルーの軍服もみな正規軍カラー。うーん。
白兵戦にテンパるカミーユ。ハロがついてきてるけど、誰も咎めないのか。そして相変わらずハロには銃弾が通じない。
陸戦兵の軍服は独特のもの。連邦軍の一部隊のものなのか、エゥーゴ独自のものなのか。色合いはエゥーゴらしいけど。
一方その頃アンマンでは2機のハイザックがアーガマの入った港を襲撃。エマのリックディアスとジムⅡが迎撃です。
それを感じ取ったカミーユがクワトロに訴えてアンマンに戻ります。
しかし前話でティターンズの兵にアンマン周辺で襲われてるんだから、アンマンが襲われる事は予想できたと思うんですけどね。
ザク伝統のヒートホークを振りかざすハイザック。
さらっと登場するネモ。百式と同様にアンマンでの補給品。
ハイザックのモノアイのアップが良作画。
機動戦士Zガンダム第7話「サイド1の脱出」
久しぶりの更新です。
ライラが退場する第7話です。
後半で「電波な」「痛い」キャラ達にあれだけ出番があることを考えると、もっと活躍させてもよかったキャラクターだと思うんですが。
富野監督はライラという技術と経験を積んだ人物が、カミーユという経験のない天才に敗れる様を実にあっけなく描きます。
またライラは自分の価値観をクワトロに、技量をカミーユに、混乱させられてしまい、敗れます。
極め付けは戦闘終了後のジェリドとカミーユの対比。
何ともTV版Zの本領発揮といえるところです。
ジャマイカンに責められるジェリド。
前回の戦闘では出撃したMSの半分がやられた、との事。
ここで正規兵から連絡。
アーガマはサイド4に直進。ジャマイカン曰く「魔の空域」。
ライラがアーガマを「ニュータイプかも」と口にしたところで、すかさずジャマイカンが否定します。「ビデオ屋の創造物」という表現がいい。
●アーガマ
軍服姿のカミーユ。
ブレックスから正式なパイロットにと打診を受けます。
撃沈されたモンブランのパイロットもアーガマに合流した事が語られます。
ブレックスの説得の中で「地球圏は就労年齢者が極度に少なくもなっている」という台詞が出てきます。一年戦争の爪痕ですね。その割にガンダムシリーズには若者がたくさん出てくるわけですが。
あと、一年戦争を「前大戦」と呼んでいるのが少し珍しい。
テーブルにはリンゴ。
ジムⅡが2機。モンブランの艦載機?ミスのせいか、塗装が本来のものと異なる。
前話のレビューでも書きましたが、軍服の色が対照的なカミーユとクワトロ(下に着ているシャツ?も含め)。形状も違います。
クワトロ曰く「軍の人事広報を見てもアムロ・レイのあとは追跡できない」。
重力に魂を引かれた〜の話をするクワトロ。Zから多用されるこの表現は逆シャアまで続きます。
中尉待遇で扱ってくれるかとカミーユ。実際に後半のカミーユはほぼそういう扱いになりますね。
なぜ軍人に?というカミーユに対してのクワトロの回答が素敵。
「他に食べる方法を知らんからさ。だから今だに嫁さんももらえん。」
知らないというよりは、他の道から逃げて考えないようにしているのが今のシャアといえます。
サイド4に入り監視態勢のアーガマ。人員もMSも動員。
●ライラとジェリド
ここでライラのサービスカット。宇宙戦艦でどうシャワーを浴びるか、という生活描写でもあります。
やたらと豊満な描かれ方です。
目線のやり場に困るジェリドが良い。
ブリッジのジャマイカンはオペレーターに司令と呼ばれている。
作戦会議。
ジャマイカンの発言中に積極的に意見するライラ。
「作戦参謀は私だよ!」とジャマイカン。「大尉は戦争を好むタイプと聞いたぞ」
イヤミっぷりが強調されます。表情の演出がいいです。
ライラはティターンズではないからと、2人の部下とボスニアに戻って別行動でアーガマと対峙することに。
「いい男になってくれれば、もたれかかって酒が飲める。それはいいものさ。」
富野節全開です。
ライラの戻ったボスニアはアーガマを捕捉します。
●30バンチ
アーガマでは、ヘンケンが既にエマに対して気のあるそぶりを見せ始めます笑
それはさておき、30バンチコロニーをエマに見せようとするヘンケン。「なぜ我々が反地球連邦政府行動を起こしたか、わかってもらえる」と。入港したアーガマからクワトロ・カミーユ・エマの3人が突入します。
ボスニア艦長曰く「例の作戦で住民が全滅したコロニー」。ライラと艦長は、エゥーゴの秘密基地があるのではと疑います。
ライラはジャマイカンとティターンズへの対抗心から、アレキサンドリアとの連携を待たずに行動を開始します。
関係ないですが、ライラのノーマルスーツの左腕にはティターンズのワッペンが。なぜ? ティターンズの作戦に参加している証でしょうか。
荒廃した30バンチ。
コロニーのミラーが動かず、砂嵐が吹き荒れ、ミイラ化した死体が宙を漂っている。なんという地獄絵図。Zガンダム全話を通しても最もキツいであろう場面が続きます。
「直接、刃物を持って人を殺さないからさ。手に血がつかない人殺しでは、痛みがわからんのだ」
外壁にくくりつけられたままの毒ガスボンベ。
クワトロの解説。
30バンチのデモにはエゥーゴも何らかの形で関わっていたようです。主催かもしれない。
かつてのデモの記憶には「GET THE EARTH BACK TO NATURE!」「Let Spacenoid Rule the Earth」「ACCEPT! THE AUTONOMY of THE SPACE COLONY」などのスローガンが。
単独行動のライラは、一人でうろつくカミーユを発見。
「何でパイロットスーツを着ている?」の問いに「何でって、こうなってしまって・・・」というのはカミーユの本心でしょう。
クワトロとエマの会話。
「ニュータイプをエスパーのように考えているから、いつかそのニュータイプに主権を侵害されるのを恐れているのさ」
「それだけのために、人を殺せるのですか?」
「殺せるさ。ちょっとした借金のために人を殺すより、よっぽど理性的な行為といえる」
これを聞いたライラは混乱し、必死に否定しようとします。自分の所属する連邦軍と連邦政府が、まがりなりにも正義だと信じているのでしょうから。
●戦闘
急速発進するアーガマ。
カミーユがMkⅡを任されます。クワトロはアポリー機の黒いリックディアスで出撃。
ライラの「生意気な口をきいた士官」とはクワトロ。
「あんな子供に、あんな子供なのに!」
ガンダムMkⅡを自在に操縦して迫る子供のパイロット・・・ライラはカミーユをニュータイプと断定します。焦ってライフルを連射しますが、その動きはカミーユに見切られています。
アレキサンドリアではジェリドがブリッジに上がります。ジャマイカンはライラへ援軍を出すことを拒否します。この会話の時点で、ライラの死亡フラグが確定的になります。
MkⅡのライフルの直撃を受けるライラのガルバルディ。
「私がジャマイカンに言った通りだ。ジェリド、油断するな。奴は只者じゃない。そうか。私が今あの子の事を只者じゃないと言った。この解り方が無意識のうちに反感になる。これが、オールドタイプということなのか」
その理解は、しかしどうしようもないほど遅すぎた。
アレキサンドリアでジェリドは叫び、取り乱し、涙を流します。
ジャマイカンは爆発を見て「無様な」とだけ。
一方のアーガマでは、ブレックス以下大勢のクルーに笑顔で祝福されるカミーユ。「アムロ・レイの再来」とまで言われて。
戦争の非常な現実を若者達は知っていくのでした。
機動戦士Zガンダム第6話「地球圏へ」
アーガマとモンブランを追撃するアレキサンドリア他2隻。
ミーティングの場面、ジェリドはライラをはじめとする正規軍のメンバーに馬鹿にされます。
正規軍におけるティターンズの評価が垣間見えるシーンです。
ところでライラの言う「出戻りのジェリド」はどういう意味なんでしょうか。
ミスによりジェリドの眉毛が黒くなったり金になったりします。
この時点でティターンズに追撃している艦の艦名(アーガマとモンブラン)が把握されてます。
●アーガマ
連邦軍の防衛衛星に近づくアーガマでは、前回で破壊されたクワトロのリックディアスが回収されてます。
カミーユはコンピュータを使って設計図を作成していました。
「マークⅡとディアスに新しい装甲を付け足してみた」
「ゼータガンダムって名前」
そう、後のゼータガンダムです。
ランニングする乗組員。
宇宙戦艦での生活は運動不足になりそうです。
レコアに声をかけようとして、次にエマと話そうとするもうまくいかないカミーユ。
母性を求めてる感じです。
後に敵味方に分かれて決着をつけることになる2人。
その2人の会話をこっそり聞くヘンケンとブレックスの背中。
なんか笑えます。
ここで「30バンチ事件」が語られます。
バスクが反連邦デモを鎮圧するために、コロニーに毒ガス「G3」を使用したというのです。
まるでジオンじゃないかと驚くカミーユ。
ブレックスはエマに30バンチを見せることを提案します。
冒頭の場面の続き。
ジャマイカンが正規軍人にティターンズの解説。
「ティターンズであれば、階級は上がらんでも、正規軍の軍人に対して1階級上の特権が与えられる」
嫌なルールだ。
それに対する正規軍人の、
「てことは、月の有給休暇が3日も増えるんだ!」
という反応が笑えます。
よくガンダムF91以降の連邦軍は弱体化していると言われますが、その兆候はこのグリプス戦争の時点で既に出ているのです。
そんな中でジェリド(ティターンズ)批判を忘れないライラ。
ジャマイカンは作戦の戦闘隊長としてジェリドを指名します。
自分の方が経験が上だと不満を述べるライラにニヤリと笑うジャマイカンの一言、
「言ったろう、ティターンズは1階級上だと。」
ジャマイカン、あるいはティターンズ兵全体の気分を良く表現している場面です。
ミーティング終了後、すぐさまライラにケンカをふっかけるジェリド。
しかし見事にあしらわれます。
蹴りをみまうライラがカッコいい。
ジェリドの立ち位置ってべジータに似てるよね。
発言から察するにライラはスペースノイドと思われます。
ライラに「雑な神経」などと否定され批判されるうちに、その心の内を吐きだしていくジェリド。
「何故だ。地球でも充分訓練はした。適応能力は高かったんだ。だから俺は、ティターンズになれたんだ。」
「教えてくれ!俺は奴を倒したいんだ!」
「何故?・・・俺だって、いつかはティターンズをこの手にしたいと思っている。そのためにはメンツを捨てて、勉強しなくちゃなんないんだ。」
つくづくZガンダムは台詞が良いと私は思います。
ライラは戦いを教えるとして、ボスニアからの発進を提案します。
●アーガマ
出撃の支度をするクワトロ、カミーユ。
既にアーガマの正パイロットのようなカミーユは、30バンチ事件の話を持ち出します。
「何故暴動が?」
「人間は他人を信じないからさ。信じないから疑い、疑うから他人を悪いと思い始める。人間を間違わせるのさ。」
「じゃあクワトロ大尉も、他人を信じないから戦うのですか?」
「いや、ティターンズが暴走を始めたから、戦うのさ。」
悟っているようで、自分に言い聞かせるようでもあるクワトロ。
カミーユをまるでアムロレイだと一人つぶやきます。
レコアはカプセル「ホウセンカ」で大気圏突入・ジャブローへ。
見送りに行って軽くあしらわれるカミーユ。
視線がレコアの体のラインをなぞっているのが何とも。
今回もクワトロが白いマークⅡに搭乗。
ティターンズの追手はガルバルディとハイザックが各3機。
太陽電池衛星はジムⅡが少なくとも1機配備されていたり、劇中のサイズから有人の大型宇宙ステーションのような印象。続いて低軌道防衛衛星へ。
モンブランの艦載機は胴体が緑のジムⅡ。
いてもたってもいられないカミーユはまだ片腕の紺のマークⅡでむりやり出撃(ZとZZってこのパターンが多すぎる・・・)
ここでティターンズがアーガマとモンブランを襲撃。
軽くジムⅡを1機落とすライラの戦いっぷりに驚くジェリド。
クワトロは予定通り防衛衛星を撃破しますが、
一方モンブランもライラ達の攻撃を受け撃沈。
ここで唐突に場面は地球へ。
そんな戦いの閃光を見上げるサングラスの似合わない男。
そう、アムロ・レイ。
ようやく6話にしてアムロの健在がはっきりしたわけですが、豪邸に住んでいるらしいというだけで詳細はまだまだ語られません。
気迫のジェリドとハイザック。
しかし一歩及ばず、レコアのホウセンカは予定通り射出、ジェリドのハイザックは片腕を失い撤退。
ホウセンカ射出と連邦軍の衛星2つの破壊に成功したエゥーゴ、しかしモンブランが撃沈されてしまいました。
モンブランの破片は、中央アメリカ上空にて「異常な数の流れ星」となるのでした。
演出ミスっぽい部分もみられますが、カウントダウンの緊迫感とスピード感のある格闘戦がなかなかいい感じの6話でした。
機動戦士Zガンダム第5話「父と子と・・・」(2)
●子供の立場
レコアの制止も聞かず出撃しようとするカミーユ。
初期のカミーユはまだ精神的に幼く、自分が子供であるとしながらプライドは非常に高いです。
また、レコアに対して「幸せに育った人に自分の気持ちはわからない」と決めつけています。
このあたりが後に改善されるのは、ウォンの修正後にエマに叱咤された事が
大きいのだと思います。
●艦隊戦
アレキサンドリアで自ら指揮をとっていたバスクですが、追撃が長引きそうになり
ブルネイに移動します。
並行する戦艦間の移動はなかなか難しそうです。
エゥーゴのMSの接近でハイザック隊が出撃します。
指揮をとるようなジェリド。他のパイロットはジェリドより階級が低いのでしょう。
一度フランクリンを捉えたクワトロの白Mk2ですが、アレキサンドリアの砲撃で早くも右足を破損。
MSとビームが飛び交う中、フランクリンの頭の中にはベッドに裸の愛人がフラッシュバック。
生々しい描写ですが、男なんて案外大変な時にもしょうもない事を思い出したりするもんです。
バスクのノーマルスーツはなぜかパイロット仕様。
ヘルメットには連邦軍のマーク。
おそらくバスク専用の仕様なのでしょうが、ティターンズマークだとよりしっくりきます。
カミーユはウソをついて片腕の黒Mk-2で出撃。
ていうか止めろよアストナージ。
色ミスのヘンケン。黒ずくめ。
反撃するボスニアあるいはサチワヌ。
モンブランの攻撃で被弾するアレキサンドリア。
衝撃でバスクの乗る輸送ユニットが揺れます。
外部に張り付いていた兵がどうなったのか非常に心配です。
レコアはカミーユの出撃を止めず、その指示でアストナージも動きます。
艦長の立場がないぞヘンケン。
ちなみにアレキサンドリアには第2ブリッジがあるらしい。
フランクリンに向けたカミーユの独り言からは、なんとなく母へのコンプレックスが見え隠れします。
小説版のクライマックスではもっとストレートです。
これ以降のアーガマでのカミーユは、父代わりでなく母代わりだけを探しているように思えます。
おそらくそれはレコアだったのでしょうが、しかしそのレコアは自分の本能からティターンズに寝返ってしまうのです。
TV版Zの登場人物たちは皆、基本的に自分の問題事だけで精一杯なのです。
親に銃を向ける!と驚き怒るフランクリン、銃を連射します。
Mk-2への低評価も絡んで暴走気味です。
既にこの時点で救いのない2人。
フランクリンは宇宙の果てに消え、カミーユは怒りをティターンズに向けて叫ぶ。
なんか間抜けなMk-2のひとコマ。
無事移動したバスクがジャマイカンに命じます。
「エゥーゴの秘密基地とやらがグラナダにあるなどとは思うな。地球連邦の宇宙軍の半分はエゥーゴだと思え。」
ここでストーリー上ようやくエゥーゴの大体の規模が示唆されます。
ちなみにブルネイの艦長は連邦軍カラー。
●アーガマ
アーガマはルナ2を迂回しつつ地球へ。
ところでブリッジにいるこの人は誰?
彼もまた専用色の制服のようです。
休憩室らしきところで会話するクワトロ、レコア、カミーユ。
そこへエゥーゴの制服(たぶんレコアの)に身を包んだ保護観察中のエマ。
親への複雑な感情を吐露するカミーユ。
言う事を聞かないカミーユにクワトロは(ちなみにこの場面のクワトロは目が変)
シャアの事を持ち出して説得しようとしますが
自分がシャアと明かさず、あくまでも他人の話としてしたために見事に失敗します。
「俗人はついつい自分はこういう人を知っていると言いたくなってしまう、嫌な癖があるのさ」
それでもあくまでクワトロとして卑屈に笑うシャアがなんともカッコ悪い。
前半の会話にも出てきた、かつての戦争の英雄「赤い彗星」。
しかしそんな英雄は自らをさらけ出すこともできず、結果として少年を導くことができない。
少年はやり場のない感情を爆発させて泣きわめくことしかできない。
Zではこうしたコミュニケーションの失敗が繰り返し繰り返し描かれてゆくのです。
なんか凄いカミーユ。
画像だけ見ると「俺は今猛烈に感動している!!」とか言ってそうにも見えます。
ここで初めて青+白の制服カミーユが登場します。
もともとアーガマにあった予備(?)の制服でしょうか。
カミーユとクワトロは制服の色が反対です(カミーユの青+白に対してクワトロは赤+黒)。
自らの意思で戦いに身を投じるかつての戦争の英雄と、
成り行きで戦いに身を投じる戦争を知らない少年。
前者は敵を倒せずに意識をもったまま表舞台から身を隠し(逃亡し)、
後者は敵を倒して仲間のいる舞台に帰還しますが、その意識を失います。
カミーユとクワトロはやはり対の存在であるのです。
機動戦士Zガンダム第5話「父と子と・・・」(1)
「この中にあった魂が神の国にたどり着くことはないだろう。その向こうには、知的生命体が住む惑星があり、人々はここで子を産み育てることを当たり前の事としすぎていた。」
宇宙を漂うジオン兵の亡骸とナレーションから始まる第5話。
「機動戦士ガンダム」の「子を産み育て死んでいった」のナレーションに似ていますが、意味深です。
Zの初期のエピソードはやたら戦艦の中が多いですね。このあたりもZが持つ息苦しさの要因の一つでしょう。
アレキサンドリアではエゥーゴの研究をしています。リックディアスのデータが画面に映し出され、高さ18.7m・重量1080tとの表示、さらに名称も特定されています(モニター上では[RICK-DIOUS])。名称は一度アーガマに派遣されたエマが持ち帰った情報でしょうか。
クルーの制服は紺+黒。
バスクはアレキサンドリア・ボスニア・サチワヌの3隻によるアーガマ追撃を命じ、自らはブルネイでグリプスに戻ります。
「少佐はエゥーゴの本当の基地はどこか、それを探れ」
「グラナダを叩いてみますか」
「今は正規軍の中にまで浸透しているエゥーゴの中枢神経を抜き出す事だ。もう遠慮するな。任せる」
バスクはエゥーゴの規模について把握していない様子です。が、連邦正規軍にエゥーゴのシンパが多数いること、グラナダが特にその傾向があるとは認識しているようです。おそらくこれまでは怪しいとは考えつつ表立って追及できなかったのでしょうが、エゥーゴがグリプスと新型ガンダムに手を出してきた以上遠慮することはありません。こうしてエゥーゴとティターンズの対立がいよいよ表面化していくのです。
●アーガマ
例によって3トップのミーティング。クワトロの提案でMk-2は1機だけ戦線に投入されることになります。
他の2機は解体作業が行われ、投入する機体は初代ガンダムに似た白系統へ塗り直し。この場面でオリジナルの紺+黒のカラーリングはレコアに「ティターンズ・カラー」と表現されています。
フランクリンはもともとエゥーゴにいる気などさらさらなかったのでしょう。機会を見つけると、クワトロのリックディアスを強奪してティターンズへ帰還しようとします。
このあたりの「頭も良く行動力もあるが向こう見ずで想像力に欠ける」行動は、息子のカミーユもしっかり受け継いでしまっている感があります。
ノーマルスーツなしのクワトロは白く塗られたMk-2で追撃。ガンダムに乗るシャア、貴重です。
ここでブレックスがヘンケンに話しかけます。
「知っているかね。赤い彗星と呼ばれた男を」
「自分はア・バオア・クー会戦の時、後方のサラミスにいました。」
「ほう」
「しかしあのジオングというのは見ていません。ですが、何といいますか、赤い彗星の力といったものは感じましたし、今も感じますね」
「誰にだ」
「クワトロ・バジーナ大尉にです」
「なるほど。彼はジオン・ダイクンの遺志を我々スペースノイドに伝えようとしている」
TV版Zでは、少なくともクワトロ自身はこの時点でシャアであることを公にはしていません。しかしシャアであることを隠そうともしていません。まあ赤い制服着て赤いMSに乗ってるんですから。そんな彼を見てブレックスもヘンケンもシャアの名前は出さずとも確信を持って接しているようです。
次回に続きます。
機動戦士Zガンダム第4話「エマの脱走」
●暴走カミーユ
前話で最悪の結末を迎えたヒルダ人質作戦ですが、当然怒りに震えるカミーユはジェリドのハイザックを攻撃します。そこへクワトロ隊とエマが出撃しさらにはライラ隊まで乱入。誰も事態を正確に把握できずに戦闘だけが続く、こうした救いようのない混乱がTV版Zのひとつの本質といえます。それはもしかすると「ガンダムの新作を作る」という状況そのものの投影なのかもしれませんが。
エマはカミーユの火に油を注いでしまいます。彼女自身が若いので仕方がないですが。劇場版ではもう少し余裕のある人物として描かれています。
ヒルダは死亡しましたが、エゥーゴはバスクの要求をのむことにしました。クワトロとヘンケンはエマが将来的にエゥーゴにつくだろうという期待をしており、その上での判断です。
出港時に正規軍カラーだったガディ艦長の制服が紺+黒になっています。まあ、前作のがミスというのが真相でしょう。
カミーユとMk-2はアレキサンドリアへ。
フランクリンは愛人のことをカミーユに皮肉られ、それを聞いていたバスクにも持ち出され、何も言えなくなってしまいます。とことん情けないオヤジです。
ジェリドはカミーユを挑発してみせつつ、自分を殴らせようとします。彼なりにヒルダを殺してしまったことに対する責任の取り方(?)なのでしょうが。Zの登場人物たちは敵味方問わずコミュニケーションがうまくいきません。
しかしジェリドは作戦の内容には疑問を抱かなかったのでしょうか。上官から事前に説明されていた作戦内容が嘘で、より非人道的なものだったというのに。一方で疑問を感じていた兵もいるわけで、それがこの後脱走するエマなのですが。
「今度は君のやり方を見せてもらえんか。正攻法でアーガマの新型MSを略奪してもらいたいのだ。中尉ならできるはずだ。私に意見をするほどの器量をお持ちだからな」
バスクです。
映像にはありませんが、エマはバスクに先の作戦について抗議をしたようです。そこでバスクはエマを試すような提案をします。部隊司令の大佐にパイロットの中尉が意見するというのも軍隊ではありえない事なんでしょうが、しかしバスクの言いっぷりが実に嫌味です。
ここでかの有名なジェリドの「汚名挽回」発言が出てきます。言葉についてはともかく、バスクに軽くスルーされるジェリド。
エマは3機のMk-2を使い、カクリコンとデーバ・バロ中尉を従えて出撃する作戦を提案したようです。しかしそれはダミーで、実際にはフランクリンとカミーユを伴ってエゥーゴに脱走を企てます。
ここでフランクリンが一度脱走を断っているのがポイントです。バスクにいい印象はないでしょうが、エゥーゴに脱走するほどの動機もないし、何より愛人に会えなくなりますからね。それが後のフランクリンの行動につながります。
「私は、自分が信じるように生きていたいというだけで、何も変わってはいません」
無事アーガマに脱走したエマはこうつぶやきます。
後に逆の行動を起こすレコアとは最後の対決も含めて比較されますが、この一言だけ聞けば本質的にはそれほど違いはないといえます。もちろん、2人の「信じるもの」が決定的に違うのですが。
この後物語はフランクリンの空気読めなさと、それに対するカミーユの憤りをダメ押しして次回に続きます。