機動戦士Zガンダム第2話「旅立ち」

クワトロ達は外壁(窓の部分)に直接穴をあけて侵入、ガンダムMk-Ⅱ奪取を目指します。
一方カミーユは、結局基地に戻ってきてしまいます。
「あの軍人たち、許せないな」
もともとティターンズに良い感情を持っていなかったり、親がティターンズ絡みの仕事をしているというのもあるのでしょうが、おそらくはジェリドの件とマトッシュの尋問で相当にプライドを傷つけられて腹を立てているようです。
ジェリドといえば、事故の事をエマに責められるも開き直る始末。
そこへブライトがやってきて怒鳴ります。ブライトはいかにもティターンズが気に入らないといった感じです。なぜか少佐の階級章をつけていますが、Zではこの階級章のミスが非常に多いです。

対応すると言ってどこかへ行くジェリド。この後どう行動したのかは劇中には出てきません。終盤、脱出したリックディアスハイザックで追撃しますが失敗します。
ジェリドは全体を通して行動力はある(しかし結果が伴わない)人物として描かれます。


リックディアスVSジムⅡ

さて、リックディアスに対してグリーンノアで迎撃するのはジムⅡです。パイロットのノーマルスーツを見る限りティターンズではなく正規軍のようです。
個人的にはジムⅡは、新規に建造されたものではなくあくまで既に建造された機体のアップデート版といった印象を受けます。
後のシーンとあわせて、全天周モニター時代のMSの戦い方がそれなりに細かく描かれます。
前作にも登場した量産機が敵の新型機に機動性で相手にならずにやられまくるという展開は後の「F91」でも踏襲されます。パイロットの質もあるのでしょうが。


グリプス

バスク大佐のもとに、この時点で早くも赤い彗星が現れたとの報告が上がります。
バスク・ジャマイカン・フランクリンの初登場。作画が安定していない感じです。状況を把握できていない様子のフランクリンは、Mk-Ⅱを「あんなものもうやってもいいでしょう」などと言ってバスクの注意を受けます。フランクリンは技術屋としてはそれなりに力があるのでしょうが、家庭だけでなくティターンズ内でもこうですから、あまり人望があるようには思えません。それが後の人質作戦での扱いにつながるのだと思います。


●市街地

母親と合流するファ。小説版を踏まえるとファは中国系で、つまり「ファ」が名字で「ユイリイ」が名前となりますが、ここでは母親にファと呼ばれてしまっています。
一方的にやられる連邦軍のMSが市街地に突っ込んできて被害を出すのはやはりF91でも同じ。
ファ曰く「ここは宇宙に住むスペースノイドからは目の敵にされている」との事。少なくともグリーンノア1にティターンズが駐留して事は、それなりに広く知られている様子です。
ジムⅡがやられまくる中、カクリコンの駆るガンダムMk-Ⅱ2号機が迎撃に出てきます。


●混沌

ガンダムMk-Ⅱ3号機を迎撃に出させようというブライト。メカマンに「テンプテーションのキャプテンが指示するのかよ」などと言われるあたりが悲しいですが、ブライトは意に介しません。
ブライトは実直な軍人としてジェリドとは違った意味で行動力がありますが、時に実直すぎて損をするキャラクターです。
後に「誰も撃とうともしないのか!」と言いながらミサイルランチャーを積んだバギーで迎撃しようとするブライトに、ただ一人同調するのがエマです。彼女もまた実直で行動力がある軍人であり、その意味ではブライトとウマが合うキャラクターといえます。

そこへ突如カミーユが乱入。すみませんといいつつ、許せない奴(マトッシュ)にひと泡ふかせようとMk-Ⅱ3号機に乗りこんでしまいます。

このあたりの行動はなかなか理解しにくいですが、おそらくカミーユは相当にプライドが高く、かつこれまでの生活の中でそれほど挫折したり苦境に立たされた事がなかったのではないでしょうか。成績は優秀、それなりにスポーツマンで、家庭も経済的には困っていない様子です。しかし彼には家庭や名前などのコンプレックスがあります。
ティターンズという気に入らない連中に名前という一番のコンプレックスを馬鹿にされ、一方的に尋問を受けた事は、彼にとってはどうしても許容できない経験だったのだと思います。何としてでもやり返したい。その一心でMk-Ⅱに乗ったのでしょう。その後どうするかはこの時点では考えている様には思えず、結果的にエゥーゴと出会って合流することができたのは偶然にして運がよかったのかもしれません。

それにしても混沌としたシチュエーションです。登場人物たちが敵味方の判断も事態の全容も把握できないまま事態が進行する。まさにZガンダムを象徴するかのような場面です。
ちなみにマトッシュは階級章をみる限り中尉のようです。


カミーユの家

前話でも少し触れたように、ロベルトはジムⅡ相手に苦戦。リックディアスとジムⅡの戦いは、容赦なくカミーユの家を巻き込みます。家が破壊され、これまで手に入れたカップなども失われます。MSを盗みエゥーゴに合流しようという場面でこの光景を目の当たりにするカミーユ。まさに彼が帰るところ(これまで送ってきた生活)を失ったことを象徴しています。


ティターンズ

ブライトが殴られまくる有名な場面の前、カクリコンはバスクに「3号機のパイロットがジェリドでなかった」件を説明しています。
ジェリドにとっては、エゥーゴのMk-Ⅱ強奪はラッキーだったといえます。Mk-Ⅱの墜落事故がうやむやになったのですから。事故の規模を考えると相当なケガ人が出ているというか死者が出ていてもおかしくない描写ですし、せっかくの新型MSでそれをやっているわけですから「始末書じゃ済まない」というレベルですら済まなかったのではないかと思います。もしかするとこの混乱の中で、墜落事故もカミーユによるものなどとされているのかもしれません。


●空気漏れ

ノーマルスーツなしでMSに乗り宇宙空間を航行している中で全天周モニターにAIRの赤い表示と警告音。自分だったらパニックになりそうです。
短い場面ですが、見る者にノーマルスーツの必要性や宇宙空間の恐怖をしっかりと植え付けます。ガンダムは基本的にはロボットアニメですが、富野監督はこうした細かい現実的な描写をさりげなく挿入するのが上手ですね。こうした部分もまたZの魅力といえるでしょう。